ダイヤモンドの指輪

初めての恋愛を失ってから一年が経ちました。

 

私はようやく、次の恋に向かう気持ちになっていました。

 

正直に言うと、ちょっと違うんです。

 

二十五歳という年齢になって、結婚をあせっていたんです。

 

恋愛よりも、結婚。

 

とにかくすぐに結婚できる相手をみつけようとしていました。

 

今になって考えるとなんであんなにあせっていたのかわかりません。

 

でも、そのときはそれしか考えられなくなっていました。

 

お見合いの話がいくつかきたりもしましたが、恋愛結婚にこだわっていた私は一度もお見合いはしませんでした。

 

そんなときにクラス会の知らせがあり、そこで相手を見つけるというつもりはなかったのですが、とにかく出かけていきました。

 

毎年やっているクラス会なのでメンバーはほとんど同じです。

 

でも、この日はいつもきたことのない同級生が数人きていました。

 

婚約したばかりという女の子(元女の子?)が左手の薬指に嵌めた指輪をみせています。

 

大きなダイヤモンドの指輪でした。

 

私は、高価な宝石には興味がなかったのですが、お世辞に「いいなあ、うらやましい」と言っておきました。

 

そのとき私の前に座っていた男性から、翌日電話がありました。

 

いつも幹事をしてくれている人から私の電話番号を聞いたそうです。

 

あとでわかったのですが、そのツヨシは、私が来るのを幹事さんに聞いたので、初めてクラス会に出席したそうです。

 

クラス会のあった翌週の日曜日。

 

初めてのデートでした。

 

銀座で映画を観て、ちょっとオシャレなお店でイタリアンのコース料理を食べました。

 

そのあと、彼の家に寄りました。

 

弟さんが結婚したら住むことになっているという二世帯住宅に、今はまだ彼がひとりで住んでいました。

 

「教室では、隣りの席だったよね」

 

「えっ、そうだったっけ?」

 

「俺は覚えてるよ」

 

「ごめん、覚えてない」

 

「あのとき、好きだったから、覚えてるんだ」

 

「うそ……」

 

「ほんとだよ」

 

ツヨシの手が私のあごにかかって、少し上を向かされると、私は目を閉じました。

 

唇が触れ合うと、自分の唇が震えているのがわかりました。

 

ツヨシが私の肩に手を置いて、唇を深く重ねてきます。

 

口の中に舌を差し込まれると、どうしようもなく身体が震えてしまいました。

 

震える私の舌にそっと触れてから、ツヨシが離れていきました。

 

恥ずかしくてうつむいている私に、

 

「家まで送るよ」

 

そう言ってツヨシは立ち上がりました。